義父との別れの曲

2012.01.09(19:26)
今日はいつもと違ってちょっと重い内容なので、スルーして下さって結構です。

義父はがん宣告を受けてから人とあまり接することがなくなり、親戚にも病気であることは伏せていました。
葬儀も本人の希望で、ごく内輪だけで簡単なものにしました。

式場で葬儀が始まり、音楽が流れました。
その曲が聞こえてくると何か鳥肌が立つような感じがしました。
と、同時に、義父の死が夢ではなく現実のことなんだと実感がわいて来て、涙がぼろぼろこぼれてとまりませんでした。

何かすごく懐かしい曲、しかしとても悲しい曲でした。
何の曲だろうと思い出そうとしましたがどうしても思い出せません。
琴の演奏なので日本の曲のはずです。

小さなころなじみ親しんだ曲。
確か何か歌詞があったはずです。
でも、歌詞が口に出てきそうで出てきません。

なぜ、式の初めにこの曲が流れてきたのでしょうか?
もしかしたら本人の遺志だったのかもしれません。
あるいは主人が選曲したのかもしれません。

なぜフランス人の葬儀に日本の曲を流したのでしょうか?
まだ皆の心の傷が深いので、この件は義母たちに聞いていません。

実は、義父は若いころ仕事の関係で当時フランス領であった北アフリカやサイゴンなどのアジア、そして日本などへ長期で出張をよくしていたそうです。

義父から東京へ行ったときの思い出話を聞くことがありましたが
「お義父さん、そんな東京、私が生まれる前の話で、私はそんな東京知りませんよ。」とよく笑って話したものでした。

また、退職した後は暇だからと独学で日本語を勉強していました。
私が日本から手土産に何か持っていくと、日本語の包みや説明書の漢字を興味深そうに眺めて、意味のわかる部分があると、私に
「これってこういう意味だよね?」と確認して、それがあっているととてもうれしそうな表情をしていました。

曲を聴きながらそんな表情の義父の顔が思い浮かんで、涙が止まりませんでした。

結局何の曲だったかはそのときは思い出せずじまいでした。

年が明けてまもないある日、早朝に頭の中であの曲が聞こえてきました。
曲を聴きながら、まだ朦朧とした意識の中、「月」という言葉が思い浮かびました。
「月光?違う・・・」
「荒城・・・荒城の月・・・そうだ、荒城の月、滝廉太郎作曲の荒城の月だ。」

先週子供の新学期が始まって、昼間一人になって「荒城の月」で検索してみるとYou Tubeでビデオがありました。
どきどきしながら曲をスタートしたら、やはりあのときの曲が流れてきました。

歌詞を読んだのですが、すごく難しい歌詞なんですね。
どうりで曲を聴いても歌詞がすらすら出てこなかったはずです。


義父がなくなる前に私が最後に合ったとき、義父は本当に衰弱していて直視できない姿でした。
私はそんな姿を見てあふれそうになる涙をこらえるのが精一杯で声をかけることさえできませんでした。

義父はモルヒネの影響で、朦朧とした意識の中で「こんな情けない姿で申し訳ない。年をとると体にがたが来るもので・・・」と残り少ない力を絞って私たちに声をかけました。
でも、私は何も答えることができませんでした。
その後すぐに薬のせいで義父がうとうと始めたので、私たちは部屋を出ました。
私が義父にあったのはこれが最後でした。

誰が葬儀にあの曲を選んだのかは知りませんが、あの曲は義父から私への別れの曲だったように思えます。
あの日に「さよなら」を言えなかった代わりに・・・

たとえ、あの曲を選んだのが義父ではなく私の主人、あるいは他の人だったとしても、それはきっと義父の遺志を反映してのことだったのではないかと思います。

今、あの曲の題名を思い出して、やっとさよならを言えた心境です。
「リカったら、あの曲の題名を思い出すのに何日かかっているの?」と義父が天国で笑っていそうです。

春高楼の花の宴
巡る盃影さして
千代の松が枝分け出でし 昔の光今いづこ

秋陣営の霜の色 鳴きゆく雁の数見せて
植うる剣に照り沿ひし 昔の光今いづこ

今荒城の夜半の月 変わらぬ光誰がためぞ
垣に残るはただ葛 松に歌ふはただ嵐

天上影は変はらねど 栄枯は移る世の姿
映さんとてか今も尚 ああ荒城の夜半の月



PS/この件は記事にしようかさんざん迷ったのですが、私からの義父への別れの言葉としてアップすることにしました。最後まで読んでくださってありがとうございました。

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在仏20年以上。旅行が大好きです。たまに通訳翻訳もしています。

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